株式会社 FRPカジ メールマガジン
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┏┏┏┏ メッキ/表面処理設備長寿命化のための
┏┏┏┏ 補修/改修へのFRP活用の基礎知識
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2019年10月1日
第五回: メッキ/表面処理設備で問題となる鋼鉄槽の劣化とFRPライニングによる当該劣化抑制
<目次> ━━━━━━━━━━━━━━━━
・「補修/改修へのFRP活用の基礎知識」
<補修/改修へのFRP活用の基礎知識> ━━━━━━━━━
FRPを用いた補修/改修の対象のアプリケーション例として、前回までのFRP槽、槽設置ピットに加え、付帯設備における塗装をご紹介しました。
次回のメルマガでは、FRPによる鋼鉄槽の長寿命化に効果がある各種ライニング仕様を取り上げる予定です。
今回はその前段階として鋼鉄槽の劣化に着目し、
どのような劣化や問題が生じるのかについてご紹介したいと思います。
【鋼鉄槽劣化のメカニズム】
鋼鉄の主成分は鉄です。鋼鉄槽はこの鉄の腐食によって劣化が進む、というのが主なメカニズムになります。
この鋼鉄の腐食は、鋼鉄槽のように内部に液体をためている場合、
その液面との接触部分で発生するため「湿食」とも呼ばれています。
この腐食に大きな影響を与える因子の一つとして、その接触液の pHがあります。
主に鉄原子のFeが電子を放出しFe2+へと変化する酸化反応(アノード反応)がその正体ですが、
この際に発生する電子に対して鋼鉄に接触している溶液中の水分の反応がpHによって異なるのです。
まずpHが低い場合、つまり酸性状態では、大気中の酸素と溶液中の水素イオンH+が上述の電子と反応し、水を発生させるというものと、
同水素イオンが水素となる反応があります。
前者は硝酸や濃硫酸など酸の中に酸素原子が含まれているもの、
後者は塩酸などの酸素を含まない酸で進行する反応です。
これらの反応は電子を受け取る還元反応(カソード反応)になります。
その一方で溶液が中性に近い場合、還元反応は大気中の酸素と水が反応し、
水酸化物イオンが発生するというものが主体になります。
このようにして発生した水酸化物イオンと鉄イオンが反応して水酸化鉄(III)が生じ、
そこから水が離脱することでオキシ水酸化鉄と呼ばれる化合物が表面を被覆することで全面腐食が発生します。
pHが高いアルカリ性領域では、
電位とpHの関係から鉄は腐食が進行するFe2+の形態をとれないため腐食はあまり起こりません。
この辺りの基本的な情報は以下の所にも記載されておりますので、詳細はそちらをご覧ください。
※参照元:
腐食の基礎
ものづくり基礎講座(第56回技術セミナー)
『金属の魅力をみなおそう 第三弾 観察・分析編 第五回』
東北大学金属材料研究所 正橋直哉
http://www.trc-center.imr.tohoku.ac.jp/_userdata/mono56_2.pdf
【鋼鉄槽劣化の状態】
鋼鉄槽の劣化はゴム、塩ビ等の各種ライニング層が劣化や破損により下層部の鋼鉄槽に薬液が浸透し、この薬液が主因となって上述した腐食メカニズムが進行することによって生じます。
一方で電気メッキ工場のラインにおいては鋼鉄部が露出している部分があるため、
その箇所において被メッキ製品と同様に反応を起こしてメッキ等が蓄積します。
その結果、槽内に凹凸が発生することにより均一メッキに支障が出るなど生産の妨げになっています。
また、酸性溶液を用いたメッキ工程の場合、既に述べた腐食メカニズムにより鋼鉄槽に穴があき液漏れも起こす場合もあります。
【FRPライニング適用による鋼鉄槽劣化の抑制】
鋼鉄槽の劣化の抑制には薬液に直接鋼鉄部を接液させないのが原則であるため、
何らかのライニングを施す必要があります。
一般的にはFRPライニング、塩ビライニング、ゴムライニング、特殊なところではグラスライニング等々ありますが、トータルで長い年月やコストを考慮した場合、FRPライニングがベストな選択と思います。
ただし一般的なFRPライニングではなく、当社独自の特殊工法を適用するのがその前提となります。
当社特殊工法を基本としたFRPライニングの優位性や、FRPによる鋼鉄槽の長寿命化に効果がある各種ライニング仕様については次号メルマガで取り上げたいと思います。
設備の老朽化や更新にお悩みの方にとっての一助になれば幸いです。